力と運動方程式

今回は、「力」と「Newtonの運動法則」について解説する。力学の基礎中の基礎であり、古典力学はこれらの法則から導かれている。与えられた力のもとでどのように物体の運動が記述されるかを考える、力学の根本原理だ。

  • 力とは何か
  • Newtonの運動の法則
  • Newtonの第1法則 ー慣性の法則ー
  • Newtonの第2法則 ー運動の法則ー
  • Newtonの第3法則 ー作用反作用の法則ー
  • 運動方程式の偉大さ

・力とは何か

力と聞いて、どのようなことをイメージするだろうか。「力持ち」「影響力」、まあいろいろ言葉はある。しかしどんな言葉であれ、なんとなく「ものを変形させる」だとか、「ものを動かしたり」とかいうイメージが中心にあるかもしれない。なるほど、モノに力を加えればものは動くし、形を自由に変えることができる。しかし、物理では少し違う。物体の運動を変化させる物理量であるとしか言えない。最初聞いたら「はて?」となるのが、物理のあるあるである。今後、様々な力が出てくる。重力、電磁気力、弾性力、摩擦力etc…。まあいろいろあるが、とりあえずそのようなふわっとした認識で進めていこう。あまり踏み込むと、哲学的になる気が、、、。


・Newtonの運動の法則

17世紀、イギリスの大科学者、Sir Issac Newton は力学の現象を説明するための三原則を「発見」した。よくリンゴが落ちて、万有引力の法則を発見したと言われているが、運動の法則についてはあまり触れらない印象だ(とても残念でならないが)。これらはNewtonの運動の法則として、物理学の大原則になっている。現代にいたる物理学まですべてはここから始まったのだ。これらの法則は、当時の水準では、あらゆる現象を説明できてしまっていたせいで、20世紀の量子論の誕生etc…まで、絶対不変の原理だと思われていたぐらい、うまくかつシンプルに構築された法則なのだ。そのような法則が、修正されたりしていくことも物理の魅力である。

Newtonが主張した運動の法則は以下の3つである。

  • 第1法則 慣性の法則
  • 第2法則 運動の法則(運動方程式)
  • 第3法則 作用反作用の法則

それぞれみていこう。


・第1法則 慣性の法則

慣性の法則とは、以下のような主張だ。

「物体に力が働かないか、働いても合力が0であるなら、静止している物体は静止しつづけ、運動している物体はその運動状態を続ける」

物体が同じ運動を続けようとする性質を慣性という。

物体に力が働かないなら、物体は静止しているでしょと思ったら、そうとも限らない。

想像してみてほしい。あなたが一人で宇宙船を操縦していたとする。惑星などから重力といった力は作用していない。そんな状況で、大変だ、宇宙船の燃料切れだ。よりによってこのタイミングで、目の前の次の星(といっても重力はない)で補充できればと思っていたのに。さてあなたはどうなるだろう。遅くなって止まるだろうか、はたまた速くなって近づくか。

重力がなければ、答えはどちらもノーだ。あなたがするべきことは、なにもしないことだ。(日本語がおかしい)同じ速度で進み続け、どうすることもできない。まあ星には無事につけても、、、着陸は別問題だが、いつかは着く。慌てようが、祈ろうが、何をしようが関係ない。力は作用しない限り、同じ速度で直線状に運動する。これを等速直線運動と呼ぶ。

もちろん、最初から運動していないで静止しているとして力は働いていなかったら静止しているままだ。静止も速度が0であるから、広義で等速直線運動と言える。

また合力が0の意味であるが、これはいわゆる力が「つりあう」という意味である。トータルで見て、力が打ち消し合うとき、「力が作用していない」とみなせるということだ。

実は慣性の法則は注釈が必要だ。注釈についてはこちらを見てほしい。


・第2法則 運動方程式

第2法則は、運動方程式という、ある関係を指す。Newtonは実験をしていく中で、ある法則に気づいた。物体にある力\(F\)を加えたとき、物体はその力を加えた向きに、力の大きさに比例した加速度\(a\)が生じることに。物体によって、その比例の割合(比例定数)が異なることも分かり、\(\frac{1}{m}\)とした。これらの関係を以下の式で表す。

$$ a=\frac {F}{m} $$

この式を運動方程式と呼ぶ。同じ大きさの力で、生じる加速度がいかほどかという割合に質量(慣性質量)\(m\)を定義したのである。

少し注意する必要があるのは、運動方程式は仮定であるということだ。…ん、法則なのに、仮定?どういうことか。この法則は実験結果から導かれたはずでは。

質量は、「定義した」、つまり約束事なわけだ。本来わかるはずがない。私たちが普段長さだとか質量だとか言っているが、これはすべて定義しているから比較出来たりできるわけである。そしてその比較を可能にしている関係式のうちの一つが運動方程式である。すなわち、この長さを1mとする、運動方程式が成り立つなら、質量や加速度、そして力まで定義できるというわけだ。物理では定義はものすごく大切である。なぜなら、その定義から論理的に展開していくからだ。定義が揺らぐと、その議論そのものが非常に疑わしいものになる。定義は厳密でなければならない。

ここで注意したいのは、速度に比例ではなく、加速度に比例ということ。力を加えたら、速度が変わるという認識は、改める必要がある。変わるのは加速度。速度と加速度、そして変位についてはこちらで確認されたい。

このような状況を考えてみよう。坂道の上から岩が転がってきたとする。漫画とかでよくある場面かもしれないが、普通逃げることを考える。しかし、我々は逃げずに止めることを選択したとしよう。さあ、岩が転がってきた、ドーン、ガーーーー、岩を食い止めたー。

さて、このような状況で、力はどちらに加えているか。

岩を食い止める時、力は坂道の上る方向へ加えているはずだ。しかし、岩に押され、ザザザッーと坂を下る方向に下がった。もし、速度に比例するなら、あなたが力を坂道の方向に加えている以上、坂道を上る(!?)ことになる。とてつもない怪力の人なら一瞬で押し上げられるかもしれないが、ふつうはそうはならないだろう。実は力を加えることで、速度を変化させる、つまり加速度を生じさせているというのが運動方程式なのだ。(怪力の人は、とてつもない力で、とてつもない加速度の大きさを生み出しているのだ)


・第3法則 作用反作用の法則

この法則が主張することは、

「二つの物体が相互作用するとき、作用と反作用の力が生じ、その大きさは等しく、向きは反対である」

ということだ。物体1と物体2の間に働く力をそれぞれ,\(F_1,F_2\)とすれば、

$$ F_1=-F_2 $$

が成立するということだ。あなたが壁を押しているなら、あなたは壁から押されているということだ。本を机に置いているなら、本が机を押していると同時に、机も本を押していることになる。

注意点として、力のつり合いと作用反作用は全く違う。

力のつりあいは、一つの物体に着目したとき、合力が0になることを言う。対して、作用反作用の法則は、力の相互作用(関係)について述べている。あなたが床に立っているとき、地球があなたに重力を及ぼしている一方で、あなたも地球を重力を与えている。あなたは床に力を加えていると同時に、床から力を受けている。これらは作用反作用である。

そしてあなたが床から受ける力(垂直抗力)とあなたが地球から受ける力(重力)がつりあっている。これがつり合いの状態だ。


・運動方程式の偉大さ

物理の本質に近いかもしれないので、運動方程式がなんで大事なのかここで、ド素人なりに考えてみたい。(興味のある人だけ)

そもそも、物理学という学問は、自然の現象や自然物の性質を観測することで、自然の法則性や性質、仕組みを解明しようとする学問である。ただ、その仕組みや法則を、「こういった傾向にある」「これが起こったら、こういうことが起こる」みたく、言葉で説明することもできるのだが、いかんせん物理が対象としている現象は複雑極まりない。言葉で説明すると、そもそも正確と言えるか分からない。また、どんな人が聞いても、その内容が伝わるかと言われると甚だ疑問だ。

そこで歴代の物理学者たちは、数式という「言語」を使い、様々な現象を簡潔かつ客観的に表す方法を考えてきた。皆が分かるように厳密に定義し、そこから数学を駆使して、巧みに説明できる「モデル」(考え方)を構築してきた。

じゃあ、運動方程式を発見してなにがいいのというと、一つは予測ができるようになるということだ。

運動方程式のところで書いたように、運動方程式は仮定に過ぎないと書いた。つまりこの式を満たすなら、物体は、ある力が加わっていたり、質量なる量を持っていたり、加速度を持っているとわかるのだ。つまり、時間ごとの状態を予想することができる。運動方程式でいえば、あらゆる時刻の運動状態が分かるようになるということだ。

現代の宇宙開発でロケットがどこを飛ぶか、惑星がここを通る出会ったり、身の回りの様々な製品、例えば車、電車、スマホ、テレビetc…、それはもう大いに役立っているのだ。物理のモデルによって、過去の現象が説明でき、さらには未来に起きることまでわかるようになる、それを応用して製品を生み出せているという点は指摘しておきたい。


・まとめ

今回は、力と運動の法則についてまとめた。

  • 力とは何か
  • Newtonの運動の法則
  • Newtonの第1法則 ー慣性の法則ー
  • Newtonの第2法則 ー運動の法則ー
  • Newtonの第3法則 ー作用反作用の法則ー
  • 運動方程式の偉大さ

物体が運動をするときに、なにか「勢い」のようなものを考えることができたら、とても便利そうである。あるいは何か変わらないものがあると、運動の状態を追いやすくなるだろう。そのような量として、物理ではある「便利な量」が存在する。それは次回にまた。

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