よく「エネルギー」という言葉を耳にする。そもそもエネルギーってなんなんだろう。「あの人はエネルギッシュな人だ」こういう使われ方はよくある。物理学の観点からみるとエネルギーってどういうものなのか。すこし見方が変わるかもしれない。
・保存則とは
前回Newtonの運動方程式を説明した。運動方程式は、仮定であって、うまく説明できてしまうという話であった。じゃあ、よく言う「エネルギー保存」ってなんなのだろう。物理に関わらず、エネルギー保存ってよく言う気がする。
物理学の力学では、「保存」とは「時間に対して変化しない」ことを言う。
運動方程式は、物体の運動状態を時間ごとにどう変化するかを説明したものであった。実はこれから出てくる保存則はすべて、「時間に関わらず変化しない」ということを言っているのだ。
「保存するから何なの」となるかもしれない。しかし、複雑な現象を追ううえで、変化することに着目することも大切である一方、変化しないものを追うことも有効になりうる。
ある一つの物体の運動状態を観測すれば、他の物体の運動状態も分かってしまう。あたかも予言するかのごとく。
力学で出てくる保存則は次の3つである。
- エネルギー保存則
- 運動量保存則
- 角運動量保存則
- (断熱不変量)
断熱不変量はちょっと例外というか、発展的なので、あまり扱わない。
今回は、エネルギーの保存を見ていく。
・エネルギーって何ぞや
エネルギーってなんとも言えない「もの」だ。目には見えないし、とらえることはできない。けど、なんとなく認識できる(?)量である。厳密に定義することは難しい。けど、「勢い」の表し方の一つだろう。
前回の運動の法則のページにおいて、物体の「勢い」的なものを表したいと言った。実は「活力論争」なる、科学者の戦いがあった。
Newton の物理学が始まるまで、運動物体には「力」(?)なるものがあり、その力を活力と呼んだ。
かの有名な哲学者、René Descartesは、活力は\(mv\)、一方で、Newtonのライバルと知られたGottfried Wilhelm Leibniz は、\(\frac{1}{2}mv^2\)と主張したのだ。
そもそも運動物体に「力」というには物理学から考えると?だ。しかし、両者ともに意味ある物理量を主張していたのだ。
まあ、あとから意味があったというのはあるあるかもしれない。
エネルギーは厳密にこうだとは言えないが、やはり「勢い」の表し方の一つと言えるだろう。
・仕事という概念
仕事って聞くと、疲れるかもしれないが、いわゆる仕事に近いかもしれない。物理学における仕事も「どのぐらい頑張ったか」を表す感覚だ。
仕事の定義は以下だ。
微小な力学的仕事は、以下のように、力と変位の積で表される。
$$ dW=F(x)dx $$ ここで、\(x(0))から\(x(t))まで変化させたとき、の仕事の総量は、微小区間の仕事の総和を積分で表せる。 $$ W=\int_{0}^{W}dW=\int_{x(0)}^{x(t)}F(x)dx $$ と表せる。仕事を、力を加えて、どれだけ変化させたかということで表すのか。また確かにイメージとは合致しているかも。ただこれは1次元の定義だ。つまり、直線状しか定義できていない。
力\(\mathbf{F}\)を受けて、微小距離\(d\mathbf{r}\)移動したときの微小仕事は内積をとり、 $$ dW = \mathbf{F}(\mathbf{r}) \cdot d\mathbf{r} $$ と定義される。 点\(\mathbf{r}(0)\)から点\(\mathbf{r}(t)\)まで移動したとき、 $$ w=\int_{0}^{W}dW=\int_{\mathbf{r}(0)}^{\mathbf{r}(t)}\mathbf{F}(\mathbf{r})d mathbf{r} $$ で表せる。2次元、3次元は上のような線積分で表せる。ベクトル解析が分からん場合はベクトル解析のページをあたってほしい。
問題はなんでこれでいいのか、というか何がいいのかだ。この定義によってなんかわかるの。
そう、この記事は「エネルギー」についてであった。ということは、、、
・エネルギー保存則
実はエネルギー保存則と密接な関係がある。実は運動方程式を変形していくことでわかるのだが、、、
ちょっとやってみるか。
運動方程式は、
$$ F={m}{a} $$と書けて、両辺\(v\)を掛けて、時刻\(0\)から\(t\)まで積分する: $$ \int_{0}^{t} m \frac{d^2 x}{dt^2} \frac{dx}{dt} \, dt = \int_{0}^{t} F \frac{dx}{dt} \, dt $$
とすれば、運動エネルギー $$ K(v)=\frac{mv^2}{2} $$
により定義すると、質量は変化せず、 $$ \frac{dK}{dt}=m\frac{d}{dt}(\frac{v^2}{2})=m\frac{dv}{dt}\frac{d}{dv}(\frac{v^2}{2})=m\frac{dv}{dt}v $$
より、 $$ \int_{0}^{t} m\frac{dc}{dt}vdt=\int_{0}^{t} \frac{dK}{dt}dt =\int_{K(v(0))}^{K(v(t))}dK=K(v{t})-K(v(0)) $$ のように変形できる。ここで位置エネルギーないしポテンシャルエネルギーを導入し、 $$ U(x)=-\int_{0}^{x}F(x’)dx’ $$ と定義ですると、 $$ \int_{x(0)}^{x(t)}F(x)dx=-U(x(t))+U(x(0)) $$ となり、 $$ K(v(t))-K(v(0))=-U(x(t))+U(x(0)) $$ から、移行し、 $$ K(v(t))+U(x(t))=U(x(0))+K(v(0)) $$ となり、全エネルギーを\(K\)とすれば、 $$ E=K+U=\frac{mv^2}{2}+U(x) $$ となり、 $$ U(x)=U(0) $$ であるとわかる。つまり全エネルギーは時間によらず変化しない。
・保存力と非保存力
実は、力はいろいろあるが、保存力と非保存力と分けることができる。これはエネルギーの観点で、系(考察している対象のこと)でエネルギーが保存するか否かが分かるのだ。
- 保存力 エネルギーを保存させる
- 非保存力 エネルギーを保存させない
まんまだ。しかし、エネルギーを保存させるか否かは結構大きな問題だ。
保存力は仕事が経路に依存しないような力のことだ。
例えば、重力。ある地点から、ある地点まで移動させることを考えると、重力は仕事をしないことが分かる
・まとめ
- 保存則とは
- エネルギーってなんぞや
- 仕事という概念
- エネルギー保存則
- 保存力と非保存力
今回はエネルギー保存則についてまとめた。活力のところにあったように、他にも実はあるが、、、それは次回に。